2025年度 第17回レーザー学会産業賞の受賞者が決まりました

第17回レーザー学会産業賞が下記のとおり決定しましたので,受賞理由と共にお知らせいたします.

レーザー学会産業賞の概要
レーザーに関する製品・技術の開発,実用化,普及などにおいて,国内のレーザー関連産業の発展に貢献しうる優秀なものに対し,本会賛助会員に産業賞を授与する.
レーザー関連の産業技術として技術および市場実績を重視した『優秀賞』,市場の開拓および将来性を重視した『奨励賞』,および優れた基礎的技術または長年の累積的貢献を重視した『貢献賞』を贈呈する.また,上記3賞に加えて,レーザー産業への貢献の期待の特に高いものに対して『選考委員特別賞』を贈呈する.

今回は質の高い応募申請内容が揃っており,慎重に検討を重ねた結果,6件を選考しました.

I.優秀賞  [敬称省略]
「高輝度EUVプラズマ光源 URASHIMA」

レーザーテック株式会社
本応募は,装置・システム分野および応用分野に関するものです.同社は,最先端の半導体製造プロセスにおいて不可欠なEUVフォトマスク検査技術の革新に大きく貢献しました.同社が開発したURASHIMA光源は,EUVフォトマスク検査に対応する高輝度EUVプラズマ光源であり,ペリクルの熱負荷抑制と安定した検査用照明の両立により、従来技術の課題を解決することに成功しました.さらに,URASHIMA光源を搭載したACTISシリーズは,EUV露光プロセスにおけるマスク欠陥の高感度・高精度検査を可能にし,世界的な半導体メーカーの製造現場で広く採用されました.これらの技術革新と産業界への貢献を高く評価し,優秀賞の授与がふさわしいと判断しました.

「半導体検査装置用266nm高出力パルスファイバーレーザー光源」
株式会社オキサイド
本応募は,装置・システム分野に関するものです.同社は,半導体検査装置向け266nm高出力パルスファイバーレーザー光源の開発を通じ,業界の品質管理および製造プロセスの向上に大きく貢献しました.本レーザー装置は,短波長・高出力・高繰返し動作を実現し,従来の可視・紫外レーザーでは困難であったウェハやマスク表面の欠陥・異物を高速かつ高精度に計測可能としました.また,独自の波長変換技術とBBO結晶の育成技術により,長寿命かつ高信頼性を確保し,半導体製造装置市場における次世代プロセスの高度化に寄与しました.さらに,国内外での販売実績も着実に伸長し,今後の市場成長が期待される分野での技術的優位性を確立しました.これらの功績を高く評価し,優秀賞の授与がふさわしいと判断しました.

「レーザーセラミックスの製品化と事業展開」
神島化学工業株式会社
本応募は,コンポーネント・デバイス分野に関するものです.同社は,YAGセラミックスの透明化と高品質化に成功し,レーザー媒質としての実用化を実現しました.また,高度な焼結・加工技術を活かし,単結晶では困難とされてきた接合技術を確立し,高出力・高繰り返しレーザーに必要な大型接合部品の製造を可能としました.これにより,レーザー核融合や宇宙デブリ除去といった最先端分野への応用が拓かれました.さらに,レーザーセラミックスの大規模生産技術を確立し,安定供給を実現したことで,産業用レーザー市場での採用が拡大しており,その技術的優位性が確立されました.これらの技術革新と産業界への貢献を高く評価し,優秀賞の授与がふさわしいと判断しました.

「プリンタ向け赤色マルチビームレーザー (2、4、8ビームLD)」
ウシオ電機株式会社
本応募は,コンポーネント・デバイス分野に関するものです.同社は,プリンタ向け赤色マルチビームレーザーダイオード(LD)の開発を通じ,オフィス用プリンタや複合機の高性能化に大きく貢献しました.本技術は,高速かつ高精細印刷の実現に不可欠な複数ビームLDの量産化を達成し,独自のチップ構造と実装技術により,従来の課題であったビーム間の熱干渉を抑制し,安定したビーム出力を実現しました.さらに,高精細化に必要な波長650〜670nmの赤色LDをラインアップし,顧客ニーズに応じたカスタム対応を継続的に行い,累積販売実績2,000万本超という圧倒的な市場実績を築きました.本技術は高解像度化が求められるAR/VRディスプレイ分野にも展開可能であり,次世代市場への応用も期待されます.これらの技術革新と市場貢献を高く評価し,優秀賞の授与がふさわしいと判断しました.

II.奨励賞  [敬称省略]
「ワイヤ・レーザ金属3Dプリンタ AZ600」

三菱電機株式会社
本応募は,装置・システム分野に関するものです.同社は,ワイヤ・レーザー方式による金属3Dプリンタの開発を通じ,産業界における革新的なデジタル造形技術を確立しました.本装置は,粉末方式と比較して材料利用効率や安全性に優れる一方,高精度な三次元造形の実現が課題でした.同社は,CNCと自社製ファイバーレーザーを活用したフィードバック制御技術を開発し,熱影響を抑えた高精度な造形を実現しました.また,独自の空間5軸制御技術により,造形自由度を飛躍的に向上させました.本技術は,航空宇宙,精密部品などの軽量化・高強度が求められる分野への応用が期待され,今後さらなる市場展開が見込まれます.これらの技術的貢献と将来性を高く評価し,奨励賞の授与がふさわしいと判断しました.

Ⅲ.貢献賞  [敬称省略]
「大型レーザー装置施設の運転保守事業による科学技術・産業応用研究への貢献」

株式会社NAT
本応募は,光科学技術および産業分野への貢献に関するものです.同社は,2002年から現在に至るまで長年にわたり,大型レーザー装置の運転・保守事業を通じ,科学技術の発展と産業応用に多大な貢献を果たしてきました.近年,学術研究に利用されるレーザー装置は高度化し,レーザー強度はPWレベル,パルスエネルギーはKJを超える領域に達しています.このような高度な装置の安全かつ安定した運用には,極めて高い専門知識と技能が求められてきました.同社は,これらの課題に対応しながら,運転要員の教育や資格取得を積極的に推進し,高度な技術力と安全知識を備えた人材の育成に尽力してきました.これらの功績を称え,貢献賞の授与がふさわしいと判断しました.

以上