2024年度 第16回レーザー学会産業賞の受賞者が決まりました
第16回レーザー学会産業賞が下記のとおり決定しましたので,受賞理由と共にお知らせいたします.
レーザー学会産業賞の概要
レーザーに関する製品・技術の開発,実用化,普及などにおいて,国内のレーザー関連産業の発展に貢献しうる優秀なものに対し,本会賛助会員に産業賞を授与する.
レーザー関連の産業技術として技術および市場実績を重視した『優秀賞』,市場の開拓および将来性を重視した『奨励賞』,および優れた基礎的技術または長年の累積的貢献を重視した『貢献賞』を贈呈する.また,上記3賞には該当しないがレーザー産業への貢献の期待の特に高いものに対して『選考委員特別賞』を贈呈する.
今回は応募申請内容の質が高く,甲乙つけがたいものが多く,7件を選考しました.
I.優秀賞 [敬称省略]
「広動作温度範囲 CWDM 100Gbps(53Gbaud PAM4)EML チップ」
三菱電機株式会社
コンポーネント・デバイス分野での応募となります.同社はレーザー部と変調器部に異なる導波路構造を用いる独自のハイブリッド導波路構造と,これらの設計パラメータを最適化することで,5~85℃の広い温度範囲で動作する動作速度100GbpsのEML(Electro-absorption Modulated Laser,EA変調器集積レーザー)を実現しました.これによりチップの冷却機構が不要となり,光トランシーバーの消費電力低減に寄与する画期的な製品です.今後のAI関連産業を発展させるために必要不可欠な技術であり,また通信データ容量の増大に伴う電力量の増大にも対応しており,今後の更なる発展が期待されます.更に多大の販売実績があることも高く評価されました.よって,優秀賞に選定しました.
「高輝度・高効率なレーザー励起プラズマ光源Laser-Driven Light Source (LDLS®)」
浜松ホトニクス株式会社,Energetiq Technology, Inc.
装置・システム分野での応募となります.両社は,独自のレーザー駆動プラズマ光源技術により,真空紫外から赤外線までの幅広いスペクトルと小型で高輝度なプラズマ生成を実現しました.これは従来のアークランプによる電極間の放電を利用した方式に比べ,電極間の放電は点火時にしか必要としない特長があります.プラズマ発生後は集光された連続波レーザーのみによってプラズマを維持することが可能となり,高い放射輝度の広帯域光,優れた空間安定性,および非常に長い装置寿命を提供する優れた製品です.また,既に沢山のユニットが半導体製造工程に活用がされており,今後の更なる発展が期待されることから,優秀賞に選定しました.
「自動車用電装部品へのレーザー加工技術の適用 ~エンジンからe-mobility時代への進化に追従したレーザー加工技術開発がもたらす継続的な社会実装と産業界への貢献」
株式会社デンソー
応用分野での応募となります.同社は自動車業界の中で1973年に一早くYAGレーザーによるスポット溶接を製造プロセスに導入しました.それ以来,ボディ,エンジン,ミッション部品等の様々な自動車用電装部品にレーザー加工技術を適用してきました.現在,同社に導入されているレーザー加工設備台数は多大であり,世界中で稼働しています.このように,常に最新のレーザー加工技術を取り入れて自動車部品の高性能化を実現し,実績を積み重ねてきたことは高く評価されます.また産業機器を独自開発して現場に投入するだけでなく,継続してレーザー応用技術開発を行なっている点も特筆すべき点です.レーザー加工装置の特徴と有益性を十分示しており,SDGsの達成にも寄与することが期待できることから,優秀賞に選定しました.
II.奨励賞 [敬称省略]
「ファイバーレーザマシン「LC-VALSTER-AJ」シリーズ」
株式会社アマダ
装置・システム分野での応募となります.同社は,鋼材加工における危険性等の課題に対し独自の加工パレットタイプで外段取り可能なファイバーレーザー加工システムを開発しました.これにより,加工中に素材搬入・製品搬出・インクジェットプリンターで印字/マーキングなどを並列に稼働でき,安全かつ長時間・自動加工を行い“加工を止めない”を実現しました.また,AIを駆使した加工ヘッドノズルの状態監視や自動心出し機能,保護ガラスの状態診断機能などの独自の支援機能を組み込むことで鋼材系の加工領域を拡大させることに成功しました.さらに販売実績もあり産業の基盤技術として今後も伸びが期待できることから,奨励賞に選定しました.
「Blue-IRハイブリッドレーザー BRACE®」
古河電気工業株式会社,日亜化学工業株式会社
装置・システム分野での応募となります.両社は,青色レーザーと近赤外(IR)ファイバーレーザーを組み合わせることで,スパッタを抑制しつつ深い溶け込み加工を実現しました.青色レーザーは銅に対する予熱源として用いることで溶融池を安定化させ,IRレーザーにてスパッタフリーな加工を行うものです.また,更なる高品質かつ高速な銅加工を実現するために出力と輝度を大幅に増加したBRACE®-X(青色1kW/IR3kW)の製品化にも成功しました.本製品は自動車の電動化に伴う銅溶接ニーズに応える製品で,カーボンニュートラルの実現にも寄与できる製品であり,今後の実績が大きく伸長する可能性を秘めています.よって,奨励賞に選定しました.
Ⅲ.貢献賞 [敬称省略]
「連続発振型紫外光レーザー製品群とその科学技術への貢献」
株式会社金門光波
光科学技術・産業分野に対する貢献での応募となります.同社は1970年代~現在までの長年にわたり,連続発振型の紫外線光源としてHe-Cdレーザーの開発と販売を進めてきました.半導体レーザーによって供給できる青色レーザーとは異なり,紫外線は代替製品が少なく,同社が産業界に果たしてきた役割は極めて大きいといえます.この点で同社は,金属レーザーとして片側内部ミラー方式を採用した高出力・直線偏光の442/325nmレーザーを開発し,発振波長と出力で40機種に上るレーザーをシリーズ化しました.これらの製品を各時期における先端分野に提供し続けており,今後もその貢献が期待できることから,貢献賞に選定しました.
Ⅳ.選考委員特別賞 [敬称省略]
「レーザオートコリメータ Smart LACシリーズ」
駿河精機株式会社
装置・システム分野に対する貢献での応募となります.従来,高価・大型で産業用に使い難かったオートコリメータに半導体レーザー光源を採用することで,低価格化・小型化を実現しました.2002年に市場投入以降,普及帯産業用オートコリメータでトップシェアを維持しています.本製品は単価の低価格化に取り組んだ結果,必ずしも市場規模は大きくはなくてもユニークな製品であり,また市場の要望に応えた優れた製品です.オートコリメータの産業応用を実現するデバイス開発は産業への貢献度が高いと評価でき,今後も新規市場への普及が見込まれることから,選考委員特別賞に選定しました.
以上
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